「よさこい」が富岡の日常だった
克人さん
私たちがよさこいに関わり始めたのは、2000年代初頭のことです。当時、私は富岡町の商工会青年部に所属しており、「この町をもっと元気にしたい」という思いがありました。そこで町おこしの一環としてよさこいを取り入れることになり、地元の仲間と「とみおかWASSE」の前身となるチームを結成し、踊り始めたのが始まりました。その後、町には複数のチームが生まれ、最盛期には150名を超える仲間が踊っていました。メンバーが独立して新たなチームを結成することもあり、やがて隣町にまで活動が広がっていきました。県大会や富岡で開催される「さくらYOSAKOI」では、富岡の名前を背負って踊ることが誇りであり、私たちにとってよさこいは、まさに日常の一部でした。



原発事故に伴う避難の影響でメンバーは各地に散り、練習場所の確保も難しくなっていきました。震災の年の2011年9月に開催された「うつくしまYOSAKOI」に、避難中ではありましたが「出られる人だけでも集まって出よう」と、当時の半分ほどのメンバーが集まりました。本来は衣装をそろえて踊る大会ですが、その時はTシャツ姿での出演でした。上位を目指してきた舞台でもありましたが、この出演を区切りに、集まったメンバーで話し合い、解散を決めました。その後も声がかかることはありましたが、定期的に練習をしたり、チームとして継続的に活動したりすることは難しく、活動はいったん終了することになりました。
その後、私が郡山へ移住した頃、富岡小学校から「運動会を再開するにあたり、よさこいを教えてほしい」という依頼をいただきました。そこで指導を続けていくうちに、「いつかまたチームとして復活させたい」という思いが、少しずつ強くなっていきました。
イベントに誘われれば、集まれるメンバーだけで出演することもありましたが、当時は定期的な練習や決まった曜日での活動など、チームとしての継続的な運営まではなかなか実現できませんでした。やがて富岡に学校が戻り、私自身も4年ほど前に地元へ帰ってきました。学校でよさこい指導を続ける中で、町に住む子どもたちも少しずつ増えていると感じるようになり、「この子たちが集まれば、『とみおかWASSE』を復活できるのではないか」と考えるようになったのです。
おかえり…とみおかWASSEが帰ってきた
柚太さん
学校の授業とは別に、「もっと練習したい人はいるか」と声をかけてみたところ、たくさんの子どもたちが手を上げてくれました。その子たちを中心に活動が広がっていき、ついに「とみおかWASSE」は本格的に再スタートを切ることができました。


結香里さん
2024年の夏ごろからメンバーが集まりはじめ、夏休み前後には本格的に練習を再開しました。そして2024年4月、震災以来初めてとなる桜まつりの舞台で、ついに「とみおかWASSE」は再デビューを果たすことができました。子どもたちの踊りを見ただけで、涙が止まらなかったですね。胸がいっぱいでした。復活できた嬉しさと、集まってくれた子どもたちへの感謝の想いでいっぱいでした。私は、足腰が弱り昔のようには踊れないけれど、指導する側としてもっとチームを大きくしていきたいと新しい夢も持たせてくれました。
克人さん
私は演者ではなく、チームを紹介する立場としてマイクを持って舞台に上がりましたが、胸がいっぱいで言葉が出てきませんでしたね。
結香里さん
その時には、沿道のお客さんから、「おかえり」と声が聞こえて。その言葉を聞いた瞬間、涙が滝のように流れましたね。帰りを待ってくれていた人がいたんだって。




瞳さん
私は震災前、富岡に住んではいませんでしたが、「とみおかWASSE」を通して、家族の富岡への想いや、子どもたちのまっすぐな姿勢に触れていくうちに、富岡が自分にとって特別な場所になっていきました。今では子どもたちのことも妹や弟のように感じています。桜まつりでとみおかWASSEが再デビューした時、その踊りを見て涙が止まらなくなるほど感動しました。地元の方々から「とみおかWASSEが戻ってきたね」「復活してくれてうれしい」という声を聞くたびに、このチームがどれほど愛されてきた存在なのかを実感しました。そして、そんなチームの一員になれたことを心から嬉しく思っています。


「よさこい」は子どもたちの成長にとって最高のツール
柚太さん
現在のメンバーは約20人で、そのうち半数は小中学生の子どもたちです。再開にあたって一番大切にしたかったのは、「子どもたちのための活動」であることでした。富岡には、子どもたちが夢中になって取り組める場所がまだ多くありません。スポーツ少年団や放課後クラブのような機会もほとんど聞かない状況だからこそ、よさこいが「何かに打ち込める環境」になればいいと考えています。単に踊るだけの活動ではなく、仲間と関わり合いながらコミュニケーションを育む場にもしていきたいですね。よさこいは踊りを通した自己表現の場です。自分の気持ちを声や動きで表に出していい場所は、子どもたちにとって意外と少ないものです。ここでは思い切り自分を出してもいいし、仲間と関わることで新しい自分にも出会える。そうした経験ができる「よさこい」は子どもたちの成長にとって最高のツールだと感じています。
よさこいは「間違えていい場所」
柚太さん
メンバーのうち半分以上が移住者ですが、よさこいが新しい住民と富岡をつなぐ架け橋になっているなと感じています。私は練習のとき「いっぱい間違えなさい」と声を掛けています。失敗できる場所があることは、子どもの成長にとって大きな意味があると思うんです。声を出し、自分の気持ちを表現し、仲間と一緒に踊る。その積み重ねが、子どもたちを変えていきます。実際に、学校の先生から「以前より積極的になった」「自分で手を挙げて行動できるようになった」という声をいただいています。僕らは特別なことは教えていません。ただ、夢中になってもいい場所を用意しているだけなんです。親御さんからも「学校でも家でもない第三の居場所ができた」という言葉もいただきます。移住したばかりで不安だった家族が、よさこいをきっかけに町へ溶け込んでいく。その姿を見るたびに、やってきてよかったと思います。
結香里さん
とみおかWASSEに参加してから子どもがすごく変わったと言っていた親御さんも、子どもに感化されて、今では一緒に踊っていますよ。
柚太さん
そんな状況を少しずつでも広げていけたらと思っています。子どもがいるご家庭にとって、やはり生活の中心は子どもですよね。その子どもが楽しめる場やつながりができれば、自然と親御さん同士の交流も生まれ、町全体へと広がっていくはずです。そうした流れをつくることが、私がこの町にできることかなと感じています。
きっと富岡に来てよかったって思える
克人さん
移住を考えている方には、私たちがいますから安心してくださいと伝えたいですね。
結香里さん
世代を問わず、高齢からちびっこまで参加できますので、是非見学に来てほしいです。
柚太さん
悩みとか不安はみんな同じくらい同じものを抱えていると思うので、一人じゃないです。「とみおかWASSE」に来れば、想いを共有できる誰かがきっといますので、是非立ち寄ってもらえたらなと思います。
瞳さん
職場と家庭以外に人間関係を築きにくいと不安に感じる方もいると思います。でもとみおかWASSEに入れば、子どもや保護者の方とも関わりが生まれ、町の温かさや人とのつながりを強く感じることができます。私自身、富岡に来る前は子どもたちや住民の方とこんなに深く関わるとは思っていませんでしたが、今では繋がりは大きく広がり、富岡に来てよかったと心から感じています。富岡に来た際には、仲間として、家族としていつでも歓迎します。
