福島県浜通りの中央に位置する富岡町。海と山に囲まれ、穏やかな気候に恵まれたこの町に今、多様なバックグラウンドを持つ移住者が少しずつ集まってきています。
復興という文脈だけでなく、「自然豊かな環境での子育て」や「自分らしい暮らし」を求めて富岡町を選ぶ人が増えている理由とは何でしょうか。そして、見知らぬ土地への移住という大きな決断を、誰がどのようにサポートしてくれるのでしょうか。
今回は、移住相談員をつとめる3名へのセルフインタビューです。それぞれ異なる経緯で富岡町にやってきた3人の目線から、富岡町の魅力と、移住サポートへの思いをお伝えします。

導かれるように富岡町へ
―皆さんの自己紹介と、富岡町で移住相談員として働くことになった経緯を教えてください。
坂地さん: 私は「とみおかプラス」に入って、もうすぐ2年になります。元々は福島県南相馬市の出身。故郷を離れ、首都圏に28年住み、そこでは半導体の製造等に携わっており今とは全く違う分野の仕事をしていました。 東日本大震災をきっかけに「いつかは福島に戻って復興の手助けがしたい」と漠然と思うようになって、ボランティアなどで足を運ぶうちに、福島大学の相双地域支援サテライトの方と知り合ったんです。そこで5年ほど働き、ちょうど任期が終わるタイミングで「とみおかプラス」の募集を見つけて、ご縁があって入社しました。今は、町外に住みながら働いています。
班目さん: 私は今年で3年目になります。出身は福島県中通りの西郷村です。中学3年生の時に震災があり、その後2018年までいわき市で過ごしました。そこで原発関連の動きや復興の様子を間近で見てきた経験が大きいです。 「いずれ福島のために働きたい」という思いから、修行のつもりで上京し、東京で自治体をクライアントとするコンサルティングのような仕事をしていました。当時は地方にそういった地域活性化関連の仕事が少なかったのですが、妹から「とみおかプラス」の募集を教えてもらい、富岡町に移住して移住相談員になりました。
大和田さん: 私の出身は福島県浪江町です。今年から「とみおかプラス」に入社して移住担当になりました。高校卒業後は首都圏の大学の建築学科に進学し、都内の工務店に就職。転勤を経て、2023年に故郷にUターンし、相双地域の企業に就職しました。その後、知人から「とみおかプラス」の移住相談員の募集を教えてもらったのがきっかけで、今は町外から富岡町に通って働いています。
なぜ今、富岡町なのか? 移住者が惹かれる理由

―移住相談を受けている中で、最近の移住検討者の傾向や、富岡町が選ばれる理由についてどのように感じていますか?
班目さん: この3年間で、移住の動機が少しずつ変わってきていると感じます。以前は「第二の人生」を考えるご年配の方や、「復興のために」という方が多かったのですが、最近は若い方や、チャレンジをしたい方、自然環境を気に入って来てくださる方が増えました。富岡町を“復興”という文脈だけで見ない方が増えてきているのは嬉しいですね。
―具体的に、どのような経緯で移住を決められた方がいらっしゃいましたか? また、どのような点から富岡町を勧めていますか?
班目さん: 名古屋の移住相談会でお会いしたご家族が印象的でした。最初は福島県は候補に入っていなかったそうですが、お試し住宅をご案内し、周辺の町も色々と見ていただいた結果、「子どもを育てる環境としてすごく良い」と、富岡町への移住を決めてくださいました。お子さんに自然豊かなところで育ってほしいという思いと、旦那様のこれまでのキャリアがこの地域の求人ニーズとマッチしていたというバランスの良さが決め手になったようです。
坂地さん: 私が移住相談会などで富岡町を紹介する時は、まず“気候”から説明します。夏も冬もわりと過ごしやすいんですよ。
班目さん: 最近は「関東の夏の暑さが厳しすぎる」という声や、逆に東北北部の方から「雪の質が変わり除雪が大変」という声も聞きます。北関東あたりを検討していたけれど自分には都会すぎると感じて、雪が降らない福島県の浜通り、富岡町にたどり着く方もいらっしゃいます。「都会すぎる」というのは、最近の移住相談でのホットワードですね(笑)。
―移住支援金などの制度面も大きいのでしょうか?
班目さん: そうですね、移住支援金などの制度は後押しとして大きいと思いますが、窓口にふらっと相談に来て「こんな補助金があったんですね!」と驚かれる方も増えています。特に子育て世帯の方からは、少人数教育や充実した子育て支援制度がとても魅力的に映るようです。
大和田さん: 私は現在住んでいる自治体と富岡町の両方を見てきましたが、富岡町は暮らしに密着する施設が揃っていると感じます。ペットサロンがあったり、ジムがあったりと、最低限の生活だけでなく、余暇を楽しむための環境も整っているのが特徴だと思います。
移住相談員が感じている富岡町の魅力

―皆さんご自身が感じる、富岡町の好きな場所やおすすめのスポットを教えてください。
坂地さん: 私は「汐橋(うしおばし)」からの景色が好きですね。坂を上っていくと海がバーッと開けて見えるんです。ジェットコースターの頂上のような、あの瞬間がすごく好きです。 飲食店なら、今は絶対に「まんま家」さんを紹介します! ご夫婦のあたたかい雰囲気も素敵ですし、何よりお料理がとても美味しいんですよ。楢葉町の海鮮が美味しい「よしだ」さんや「なら福」さんも大好きなのですが、富岡町内なら「まんま家」さんがイチオシです。
班目さん: 私は富岡の「空」が好きです。海側の空だからなのか、青が深い気がします。夕焼けもきれいですし、夜の星空も素晴らしいですよ。 休日の過ごし方としては、海に行ったり、カフェを併設しているジム「Re-Birth(リバース)」に行ったりします。リバースのカフェも緑が見えて、安くて美味しいのでおすすめです。
大和田さん: 私は「富岡町図書館(学びの森)」の窓際がとても好きです。図書館なのに一面ガラス張りで、すごく明るいんです。あそこで『HUNTER×HUNTER』などの漫画を読むのが最高ですね(笑)。 蔵書の数も豊富で、移住検討者の方をご案内すると「こんなにすごい図書館があるなんて!」と、大好評なんです。



移住者と町民をつなぐ、あたたかなコミュニティの輪
―移住してくる方と、地元の方々との交流はどのような様子でしょうか?
坂地さん: 移住して起業された方が楽しくお仕事をしている姿を見たりすると、とても嬉しくなります。ある移住者の方は、「トータルサポートセンターとみおか」によく来ている地元のご年配の女性に声をかけられて、一緒にカラオケに行ったそうです。地元の人が新しく来た人をあたたかく受け入れてくれる土壌があるんだなと感じました。
班目さん: 配偶者の都合で移住してきて、最初は孤独を感じてしまう女性の方もいらっしゃいます。そういう方には、地域交流室でのクラフト教室や「とみサタ!」、社会福祉協議会のボランティアなど、地域の方と触れ合える場所をご案内しています。 一方で、あまり地域コミュニティに深く入りすぎず、ご自身のペースで静かに暮らしたいという方もいらっしゃいます。ご本人が求めている距離感に合わせて、「夜の森ピクニック」や「月の下アートセンター」のような活発な町民活動をご紹介することもあれば、必要最低限の生活情報だけをお伝えすることもあります。

「良いことも、そうじゃないことも伝えます」移住相談で心がけていること
―皆さんが移住相談を受ける上で、大切にしていることを教えてください。
坂地さん: 私は「笑うこと」です。移住の相談に来るというのは、それだけで相当な勇気が要ることだと思うんです。どんな場所か分からず緊張して来られる方に、少しでも心を開いてもらえるように、笑顔で微笑みを絶やさずに接することを心がけています。
班目さん: 私は「リアルな情報をお伝えすること」です。移住後に「思い描いていたものと違う」というギャップが出ないように、良いことも悪いことも正直にお伝えしています。 例えば、富岡町は最低限の生活には困りませんが、刺激を求める方には少し物足りないかもしれません。また、人間関係も自分から積極的に付き合っていかないと構築しにくい面があることもお伝えします。ご希望の条件を丁寧にヒアリングし、他の自治体も勧めるべきだと思えば、ニーズに合致する近隣の地域をご紹介することもあります。とにかく相談者ファーストで! 最終的に福島県に移住してくれたら嬉しいという気持ちでご案内しています。
大和田さん: 業務的にならず、自分の言葉で丁寧にお伝えすることを大切にしています。大和田さんに案内してもらえて良かったと言っていただけたときはすごく嬉しかったですね。 また、最近はLINEでのご相談がとても増えています。電話が苦手な方でも、LINEならご自身のペースで連絡しやすいと好評です。いつでも役場や関係各所にお繋ぎできる体制を整えています。

―最後に、移住に興味はあるけれど、まだ一歩を踏み出せていない方へメッセージをお願いします。
坂地さん: 移住は人生の中で大きな決断になるので、軽いことは言えませんが、「まずは1回来てみてください」とお伝えしたいです。お試し住宅もありますので、一度この町の空気を吸いに来てください。
班目さん: 考えすぎてしまって、思考が混乱してしまう方もいらっしゃいます。私たちと話すことで頭の中が整理できることも多いので、実際に富岡に来てみて、相談していただければ、きっと見え方が変わると思いますよ。
大和田さん: 富岡町はすごく人があたたかい町です。私たち相談員が町の素敵な人や場所をたくさん紹介することで、移住への一歩を踏み出せるきっかけ作りができればと思っています。
おわりに…
終始笑い声が絶えない和やかなインタビューでした。移住相談窓口には、それぞれ違う経験を持ち、フラットな目線で“今の富岡町”を語ってくれる3人の心強い相談員がいます。移住を少しでも考えている方は、ぜひ一度、LINEや窓口から気軽に声をかけてみてください。きっと、あなたに合った富岡での暮らし方を一緒に考えてくれるはずです。
写真:鈴木宇宙
インタビュー・文:遠藤真耶(合同会社knot)