「おらほや」ストーリー
私はサラリーマン時代に百貨店でバイヤーをしていたんです。だから品物を見る目、仕入れの仕方には自信を持っていて、そういったこだわりのある品物ばかりを集めたお店をやりたいと思っていたんだよね。
それで2004年にはじめたのが良品地産ショップ「おらほ・ya」。
夜ノ森に店を構えて、約7年間、地域の皆様にお世話になりながら営業していたんだけど、震災があって閉店せざるを得なかった。その後、2013年に友人から勧められて楢葉町の「ここなら商店街」(楢葉町役場駐車場にあった仮設商店街)で始めたのが「おらほ亭」。
そのお店は、除染や復興関連の仕事で来ている方にとにかく早く昼食を提供して、少しでも体を休めてもらって、また午後からの仕事をがんばってもらう。そんなコンセプトでやっていたね。
2018年に場所を変えて「ここなら笑店街」としてリニューアルしたときにお店も「食楽処おらほや」と名前を変えて再スタートしたんだ。「おらほ亭」に来てくれていたお客さんの意見なんかを聞いて、ランチの他に夜の居酒屋としても営業するようにして、仕事で疲れている人たちの息抜きの場になればいいなと思っているよ。
「とみおかのおらほや」と「ふたばのおらほや」
2021年に富岡町に「とみおかのおらほや」をオープンさせたんだけど、それにはちょっとした話があってね。
その前の年にJRの常磐線が全線再開したでしょ?その時に夜ノ森駅に見に行ったんだよね。あの時に駅に集まっていた人たちの熱気を感じたからかもしれないんだけど、突然自分の中に「富岡町でなにかやらなきゃ」っていう気持ちが湧いてきたの。一番初めに脱サラして始めたお店が夜ノ森だったというのも巡りあわせを感じたね。
そんな体験をしてから1年と少したった頃には「とみおかのおらほや」が出来ていたってわけ。2022年には双葉町にもお店を作って、いまは楢葉町・富岡町・双葉町で「おらほや」の看板を出しているよ。
売り物は「親切」
今は縁あって飲食店をやっているけど、昔から私が売っているのは「親切」なんだよね。お店に来てくれる方にはとにかく声をかけるようにしていて、そういった目配り、気配りを一番大切にしているね。お客様がどんなものを食べたいと思っているのか、そういったことに考えを巡らすのもひとつの親切の形だね。
お客様が欲しいものを届けるという意味では、例えば車だって洋服だってミニシアターだっていいんだよ。要はその時その場所でどんなニーズがあるのか、そういったことを考えてフレキシブルに変えることも一種の親切だと思うよ。実際に売っているものは何であれ、その品物を通して親切を売っているっていう感覚かな。
これは双葉町のお店の話なんだけど、そのお店に70歳のスタッフがいて、ある時「お客様に美味しいって言ってもらえてすごく嬉しかったです」って報告を受けたんだよね。仕事を通して様々な人に喜びを提供できていることに私自身も嬉しくなったよ。
富岡町でビジネスを考えている方に
富岡町でのビジネスを考えた時、一番に立ちはだかる壁は固定客がつきにくいということだね。飲食店で言えばいわゆる「常連さん」という方々だね。やっぱり単身赴任なんかで来ている方は、数年でどこかへ行ってしまうことが多いからね。固定客は売り上げの核になるから、そこが成り立ちにくいというのは確かに難しい部分ではあるんだけれど、かといって指をくわえて待っている訳にもいかないよね。顧客の固定化ができないんであれば、顧客を繋いでいく。そういった手法・戦略・戦術を考えて店を運営していくしかないと思っているよ。
親切をモットーにお客様の声に耳を傾けてサービスを提供する。これが長年商売を続けてきた私が送るアドバイスだね。
食楽処おらほや
店主 横田 峰男さん
〒979-1112
福島県双葉郡富岡町中央1丁目142
☎ 0240-23-6545