REPORT&MESSAGE

あなたへ、地元のみんなから

音カフェ721 山本 進さん・公恵さん

みんなの止まり木となれる場所を目指して

遠く広島の地から思いを寄せて

進さん
私たち夫婦は広島県の福山市で暮らしていました。東日本大震災が起きた後の凄惨な状況はテレビで見ていましたが、しっかりと自分の目で確認したい思いが募り、その年の8月に車で被災地を訪れました。津波の被害があった場所に妻と2人で立ち、その光景に言葉を失ったことを憶えています。何か自分の出来ることをしたいと思い、民間主催のボランティアセンターに入り、東北に通うようになりました。その内、被災地の状況を少しでも福山市の方に知ってもらいたいと考えるようになり、もともと音楽が好きだったこともあって、広島でチャリティライブを立ち上げたんです。2012年から毎年行い、チケットの売り上げを全額東北各地のボランティアセンターへ寄付を続けましたね。他にも“福島”と“福山”の頭文字をとった「福福の会」というボランティア団体を立ち上げて、福島県内の子供達を福山市に招待してキャンプをする活動もしていました。被災地からは遠く離れた場所ですが、自分にできることを精一杯やってきました。

そして富岡へ

進さん
震災から10年が経った時、たまたまテレビで双葉郡の状況を見る機会があって「まだこんな状況なのか」と思いましたね。そしたら、また自分の目で見たい思いが募って、1人で双葉郡のいろいろなところを見て回ったんです。実際に見たり聞いたりしていたら、ここで何かしたいという気持ちがふつふつと沸いてきましたね。

その時は63歳だったので、こっちで仕事を見つけるのは難しいかなと思っていたんですが、元々トレーラーの運転手をしていたこともあって、富岡町でダンプの運転手の仕事を見つけることができたんです。その会社が富岡町にあったので、2021年の7月から、ここで暮らすようになりました。

公恵さん
私が来たのは次の年の1月ですね。持病があって、医者から「寒いところはダメ」と言われていたので、最初は「行くならどうぞ」という感じでした。ただ進さんから「こっちに来て欲しい」というアピールは続いていて(笑)、私自身もどんなところか気にはなっていたので、進さんが単身で富岡町に移住して半年ほど経過したころに初めて、こっちに来てみたんです。そうしたら私の想像をちょっと超えていて、まだバリケードもありましたし、自分の家にも自由には入れない所もある。「震災から10年も経ってまだこういう状態なの?」と思いましたね。

ここで人生のリスタートをしようとしている進さんを見て「よし、とことん付き合おう」と覚悟を決めました。当時、福山市の自宅近くに住んでいた母も「年をとったら夫婦は一緒にいたほうがいいよ」と背中を押してくれたのも大きかったですね。「寒いだろうな」と身構えてきましたが、新しく建てられたアパートは二重サッシで、日が入れば部屋の中は温かかったので、その点は杞憂に終わりました。

この地で何かをしたい

進さん
私が来たとき、富岡町は住民の7分の1しか戻っていないといった話を耳にしていたので、みんなが集まれる場所づくりと音楽ライブを開催したいなと考えていました。ライブ開催に向けた動きは、こっちに来てからすぐ始めましたね。公民館を借りることも考えましたが、色々な方にお話をする中で「さくらモールとみおか」のスペースを借りられるようになり、2022年の4月から「さくらライブ」を開催しています。演奏してもらうミュージシャンは、私から直接お願いする人もいるし、出演してもらった人からまた別の人を紹介してもらったりしますね。そういった人の繋がりがないとなかなか続けられないと思いますよ。私も本気で人付き合いをしていますから、相手も本気で返してくれます。さくらライブも続けていくことが大事だと思っています。それがSNSなんかで人の目に触れて「何か富岡で面白いことやっているな」と見てもらえればいいですね。

みんなの止まり木となれる場所を目指して

進さん
富岡に帰ってこられた方や新しく来た方が、気軽に立ち寄れる場所が必要だなって。居酒屋やカラオケ屋はあったけれどもカフェは無かったので、これは絶対に必要だと思ったね。それでこの「音カフェ721」を始めたんです。


ただのカフェではなくて、音楽に溢れる場所にしたかった。私たち夫婦の隣には常に音楽がありましたから。町の方もそういう場所が欲しいと思っていたのか、いろいろ手助けやアドバイスをしてくれましたね。そういった意味では、タイミングが良かったのかもしれないですね。2023年の3月にオープンして、手探りを続けながら今の形になってきました。音楽が流れる空間で、ゆっくり過ごすことができる所。それはまさに、自分たちが暮らしていく中で必要だと感じていた場所なんです。

私たちのお気に入り

進さん
富岡町のいいところはこの自然ですね。海と平野があって山がある。私が住んでいた福山市にも同じようにあったけれども、山はこっちの方が深い感じがしますね。特に気に入っているのが富岡漁港の景色ですね。あの波音は抜群だと思っています。 遠くから来てもらったミュージシャンにも、よく案内するんですよ。あとは海が近いので魚が新鮮ですね。隣の町に美味しいお刺身を出すお店があって、休みの日にはよく食べに行きます。

公恵さん
私はRe-Birth(富岡町にあるフィットネスジム)ですね。理学療法士さんに筋膜リリースをしてもらって体のメンテナンスをしています。痛いんだけど、体のことを分かって伸ばしてもらえるから。稼動範囲が狭まってくるのを和らげながら改善してもらえるのが、私に合いましたね。

あとは桜ですかね。広島では、どちらかというと川沿いや山に咲いているのを見かけるけど、富岡は沿道などもっと身近な場所に桜が咲いていますね。そういう何気ない風景に癒されます。

移住者の良き相談相手になりたい

進さん
震災以来、広島でいろいろなことをしてきましたが、その活動は広島の若い人に託してきたんです。向こうにあった家も子どもたちに預けて「ここで何か人のためになることをしたい」といった意気込みで移住してきました。そんな私だから相談に乗れることもあると思うんです。移住の相談は町役場やとみおかプラスさんでもしていますけど、実際に移住してきた者だからこそわかる細かい話もあるので。

カフェに足を運んでもらえれば、どんなことでも相談に乗りますし、そういうふうにお店を使ってもらえたら私も嬉しいですね。これからもここで暮らす町民としては、この商店街や町中にお店が2軒、3軒と増えていくのを見たいですね。あとは、子どもやその親が住みやすい場所になれば、それが富岡の良さになっていくのではないかと思います。

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